腫瘍(がん)の治療

腫瘍について

腫瘍について

大切な家族であるワンちゃん、ネコちゃんが「がん」と診断されるとオーナーのみなさんは「もう治らない」「すぐに死んでしまうのではないか」と肩を落とされてしまいがちですが、そこで治療を諦めてはいけません。

「がん(腫瘍)」については治るものもあります。もし仮に治らなくても「がん」とうまく共存させてあげることによって、普段の生活も問題なく、ワンちゃんネコちゃん達が普通に暮らしていけることも中にはあります。

私たちは「がん」のより適切な診断、処置を心がけ、オーナー様と協力しあってよりよい治療を一緒に考えていきます。
もし、ご家族に「しこり」や「おでき」をみつけた、また獣医さんに「がん」と言われた、「がん」ではないかと疑っている。
そんな時には一度当院にご相談下さい。


ワンちゃんの腫瘍のなかでよくみられるのは、「乳腺腫瘍」と「皮膚腫瘍」です。まず、乳腺腫瘍はメスの犬にたくさんみられる腫瘍で、人間と同じように乳房周辺にしこりができます。皮膚腫瘍には、原因となる細胞には実に様々なものがあり、中には悪性のものも存在します。悪性腫瘍の中で皮膚の表面から出来たものはがん、脂肪や筋肉といった中の組織から出来たものは肉腫と言われます。

乳腺腫瘍

乳腺腫瘍

乳腺腫瘍は、乳房周りに生じる腫瘍です。乳頭周囲に、硬めのしこりがあれば、乳腺腫瘍の可能性が高いと思ってください。
全腫瘍の中でかなり発生率の高い腫瘍で、メスの犬の好発疾患のひとつです。
ペットが高齢になればなるほど発生率は高くなりますが、中には2歳で発生することもあります。

ワンちゃんは左右に4~5対の乳頭を持っているので、一度に複数の乳頭に腫瘍が発生する場合もよくみられます。
乳腺腫瘍は、半分ぐらいは良性で、残りの半分は悪性です。

良性腫瘍であれば腫瘍を切除することによって、根元から完治させることができますが、ただ残りの乳頭での再発の可能性はあります。
悪性腫瘍であれば、肺や他の臓器へ既に転移している、あるいは今後転移する可能性があります。
また、悪性腫瘍のうち50%は極めて悪性度が高く、転移の頻度も高くなります。

もしペットにしこりがあるときは・・・
乳頭の周りを触っていて、硬めの『しこり』を発見した時は、一度来院されることをお勧めします。
そのとき、いつ頃からか?などの情報があれば、診断する上で大きな助けとなります。

皮膚がん(腫瘍)

皮膚がん(腫瘍)

肥満細胞腫
肥満細胞腫はワンちゃんでは主に皮膚に見られ、比較的、悪性度が低い腫瘍では、大きさがだいたい直径1~4cmの弾力のある腫瘍で、だいたいは表面に毛がありません。
悪性度が高く、進行が早い腫瘍の場合は、大きめで表面に潰瘍が発生していたり、自傷したりして、出血している場合があります。また、 しこりの周りが赤く腫れて、ぶよぶよしていたり、症状がひどい皮膚炎を起こしているように見えることもあります。
 
また、皮膚の下に発症した肥満細胞腫は、なかには脂肪腫などと間違われることがあります。このように肥満細胞腫は様々な外見を持つため、見た目からは腫瘍の種類や悪性度を判断することは難しいのでしこりを発見したときは早めに検査にこられることをおすすめします。
 
また、腫瘍(がん)がリンパ節や他の臓器に転移したり、全身に広がったりすることも多く、さらに腫瘍細胞から出てくる顆粒によって 消化管での炎症や出血が起こり、それが原因で血のまじった嘔吐や下痢がみられたり、食欲不振を生じることがあります。
 
肛門周囲腺腫
主に肛門の周りに存在する分泌腺の腫瘍で、去勢手術をしていない雄犬でよく見られます。表面から出血したり、化膿したり、排便困難になる事もあります。見つかった場合は早急に手術するのがベストで、同時に去勢手術を行う事が多い疾患です。

その他腫瘍

乳腺腫瘍

扁平上皮癌
皮膚や爪の周囲、口の中などによく見られる悪性腫瘍。表面が潰瘍化している事が多く、明確なしこりを作らないで周囲に拡がっていく事も多い。早期に見つかった場合は外科治療も可能ですが、摘出困難な場合は抗がん剤治療や放射線治療、レーザー治療などを行う事もあります。

黒色腫
皮膚や口の中、目などによく見られる悪性腫瘍。口や指に発生したものは特に悪性度が高く、リンパ節や全身に転移する可能性が高い。黒いしこりを見つけた場合は要注意。

口腔内腫瘍
扁平上皮癌、黒色腫、繊維肉腫のような悪性腫瘍も多く、部位や状況などによって治療方針が異なる。早期であれば外科的摘出を考えるが、すでに進行している場合は抗がん剤治療やレーザー治療、放射線治療などを考える。

骨肉腫
骨に発生する悪性腫瘍で、大型犬の四肢にできる事が多い。発見した時点ですでに肺転移している事も多いが、痛みを抑えるために断脚などの外科治療を行なう事も検討する。抗がん剤治療で進行の抑制を行う。

腹腔内腫瘍(肝臓・脾臓・腸管・膀胱腫瘍)
肝臓、脾臓、腎臓、腸管、大網などの腹部臓器に発生する腫瘍の総称で、進行しないと発見できない事も多い。レントゲンや超音波検査で早期診断が期待できる。腹腔内で破裂して出血する事もあるため、定期検診などで早期発見に勤めるべきである。

治療法について

外科治療

■外科治療について
これらの腫瘍で、まず治療の第一にあげられるのが、手術による腫瘍の切除です。外科手術は大きく根治的手術と緩和的手術に分けられます。
 
外科手術のみで根治が期待できない状況や、外科手術後の転移や再発の防止のために、状況に応じ化学療法や放射線療法を併用する場合があります。当院では放射線療法がありませんので、必要な場合には設備のある動物病院がありますので、そちらをご紹介させて頂いております。
 
■化学療法について
化学療法については、その抗がん剤によるメリットやデメリットを十分検討したうえで投薬しております。腫瘍の種類やその目的などによって様々な使い方があるので、詳しくは個々の病態で説明させていただきます。

リンパ腫について
リンパ腫は白血球のひとつであるリンパ球が腫瘍化する病気で、「多中心型」「縦隔型」「消化器型」「皮膚型」などに分類されます。若齢で発生する事も多く、猫では猫白血病ウィルス(FeLV)との関連も示唆されています。
治療は抗がん剤治療が中心で、外科治療が不適応である事が多いです。治療反応は様々で、抗がん剤がうまく効けば半年以上の延命も期待できます。
早期発見のために、普段から体をくまなく触ったり、血液検査、レントゲン、超音波検査などの精密検査をしていくことが大事です。

■レーザーによる蒸散・温熱療法
また、様々な要因で外科手術が不可能な場合、半導体レーザーによる蒸散や温熱療法などを行なっております。
体表の小さな腫瘤の場合は局所麻酔で蒸散できることもありますし、手術不可能なくらい大きな腫瘤の場合にも温熱療法で緩和的な治療を施すことができます。